突然ですが、私はリバプールFCというサッカーチームを深く愛しています。リバプールを応援し始めたのは2001-2002シーズンからです。翌年に開催されるサッカー日韓W杯を観るため、実家がスカパーに加入したことがきっかけでした。写真は2008年、ボクシングデーの試合を現地観戦に行った際のチケットです。
リバプールの歴史や戦術、魅力について語ると、おそらく10万字を超えてしまうので、今回は割愛しますが、ご了承ください。今回は、この愛するチーム・リバプールFCの財務諸表を読み解き、収益構造を把握した上で、他のチームとの違いについても比較していきます。記事内容は基礎レベルの会計や財務知識がある方向けとなっています。どうぞお付き合いください。
リバプールFCとは?
リバプールFCは、1892年に設立されたイングランド北西部リバプールを本拠地とするサッカークラブで、国内外で最も成功したクラブの一つとして知られています。これまでに国内リーグで19回、欧州最高峰の大会チャンピオンズリーグで6回優勝しており、その歴史と伝統から「名門クラブ」と称されています。特に、本拠地アンフィールドで歌われる「You'll Never Walk Alone」は、クラブの精神そのものを象徴する名曲として有名です。
過去には、ケニー・ダルグリッシュやイアン・ラッシュ、スティーヴン・ジェラードといった伝説的な選手たちが在籍し、クラブの黄金期を築きました。長い低迷期がありました(これも別途記事にします。)が、近年ではユルゲン・クロップ監督のもと、2019年欧州チャンピオンズリーグ優勝、2020年には30年ぶりとなるプレミアリーグ制覇を達成し、その実力を再び世界に示しています。
日本との関わりも増えてきています。かつては日立がユニフォームの胸スポンサーを務めたこともあります。2020年の南野選手の加入には胸が躍りました。現在は日本代表の遠藤選手が所属しており、日系企業もJAL、日本ハム、講談社がスポンサー契約を締結しています。あまり知られていないところでは、メディカルチームに渡邊元範さんという方がマッサージ担当として活躍されています。
リバプールFCの財務諸表概略
上記表はリバプールFCの直近5年の財務諸表を表にしたものです。
<注意点>
- 1£=200円で計算。
- 会計年度は6月1日から翌年5月31日。欧州サッカーチームではこの会計年度が一般的とのこと。
- 2022-2023が最新情報。2023-2024決算は2024年5月末に締め、9月の株主総会で既に可決されたが、公開されるのは2025年1月から2月になる予定。
- 以下の分析は最新版の会計報告書に基づいています。
リバプールFCの収入(売上高源泉)について
商業収益(545億円)
- 商業収益は以下の3つから成り立つ:
①スポンサー収益
②グッズ収益
③プレシーズンツアーでの収益 - 特に①のスポンサー収益が最大の割合を占める。主なスポンサーとしてNikeから年間100-150億円、胸スポンサーのStandard Chartered銀行からは約年間100億円が支払われているとの報道もあり。主なスポンサーは以下表の通り(前述の日系企業は省略)。
- 商業収益は以下の3つから成り立つ:
メディア収益(483億円)
- プレミアリーグ放映権収入
- 国内放映権:イギリス国内での試合中継権による収益。スカイスポーツやBTスポーツが主要な放映パートナー。
- 国際放映権:海外市場での放映契約。プレミアリーグ全体の放映権収入はリーグ内で均等に分配され、成績や試合の視聴数によって一部変動。
- 欧州大会放映権収入(UEFAチャンピオンズリーグまたはヨーロッパリーグからの収益)
- 進出したラウンドに応じた報奨金を含む。例:決勝進出時の収益は累計数十億円のボーナスがある。
- プレミアリーグ放映権収入
試合日収入(160億円)
- チケット代金やホームスタジアムでの飲食売上が含まれる。
リバプールFCの支出について
支出については、選手の移籍関連の人件費や移籍費用が売上原価、営業費用、純損失など様々な箇所に現れます。そのため、売上高から純利益を差し引いた金額を支出としてまとめています。2022-2023シーズンの支出総額は1,263億円。その内訳は以下の通りです。
人件費(750億円)
- 人件費の約70%が選手年棒で、監督やスタッフの給与も含まれる。選手には年俸支払いだけでなく、住居や車の支給、家族の引っ越し費用、子供の教育費なども契約に基づき提供される場合があり。
移籍関連費用(220億円)
- 移籍金だけでなく、過去の移籍金の減価償却費も含む。移籍金は無形資産として計上され、選手の契約期間に応じて減価償却される。
試合関連費用(140億円)
- 試合日の運営費(例:セキュリティ、試合日スタッフの給与、設備使用料)
- スタジアム内での飲食物販売に関連するコスト
- 商品原価(ユニフォームや公式グッズの製造コスト)
- 放映関連費用(試合映像制作費、放送の技術サポート費用)
その他(153億円)
- 設備管理費用(練習場やホームスタジアムの減価償却費、維持管理費)
- 利息支払い(12億円程度)
- 商業運営費(マーケティング費用、広告費など)
他サッカークラブとの比較
2022-2023シーズンの他ビッグクラブの売上高と純利益を比較すると、リバプールFCの売上高はトップとの差が10%程度しかないことが分かります。ただし、純利益については7チーム中5チームが黒字です。スタジアムの投資計画や移籍市場での動きが損益に大きく影響するため、一概に黒字が良い、赤字が悪いとは言えませんが、だいたいの規模を把握するためには良いデータといえるでしょう。
他スポーツチームとの比較
- 売上高は億円。$1=150円、£1=200円、1ルピー=0.8円で計算。
- 2023年のデータを使用
- 各スポーツから一般的に知名度の高いチーム及び売上高がリーグ内1位のチームを選出。著者の独断。
- スポーツについては市場規模の大きいスポーツトップ5から抜粋
- ヨーロッパサッカーの規模は全スポーツの中でも1位。全世界にマーケットを広げた結果、売上高1000億円超のクラブが10以上存在。
- F1も全世界を周遊するスポーツとしてトップチームは売上1000億円超。
- アメリカの4大スポーツのトップチームは800-900億円程度の売上高。サッカーに及ばないのはグローバル展開の差か。
- インド恐るべし。インドクリケットチームとNPB読売巨人軍の売上高がほぼ互角。
- 日本のスポーツビジネスはまだまだ。円安の影響もあるか。


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